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オープンデータ活用術・完全版【第1章】④地方自治体の事業を調べる

文:D-JEDI理事 熊田安伸

今回は、地方自治体の事業などを調べるためのオープンデータを紹介します。ただ、内容や仕様が統一されている訳ではないので、全ての自治体に共通して存在するものとは限りません。その点はご了承ください。

「主要な施策の成果」を使う

地方自治法に基づいて、地方自治体が決算とともに議会に示すのが「主要な施策(政策)の成果報告書(説明書)」という書類です。年に1度しか出てきませんが、自治体がどんな事業を実施し、どれだけの費用を支出したかが分かる重要な資料です。住民にも公開すべき情報なのでネットでオープンにしている自治体も多く、ネットにない場合でも情報公開室などに行けば、情報公開請求をしなくても手に入ります。

静岡市の場合は「主要施策成果説明書」

内容は予算費目ごとの目次、一般会計・特別会計の状況についての決算報告、そして事業評価調書(事業評価シート・詳しくは後述します)です。書式は自治体ごとにまちまちですが、ほぼ同じような項目が掲載されています。

「事業評価シート」は地方版の行政事業レビューシート

自治体の行った事業について、事業ごとの予算や目標との比較、その評価や改善点をまとめたのが「事業評価シート」です。事業の評価については必ずしもシートの形式で作成されているとは限りませんが、作成している自治体は「主要な施策の成果報告書」に盛り込んでいて、ホームページなどで公開されています。

埼玉県秩父市のホームページが分かりやすかったので、こちらで紹介しましょう。

埼玉県秩父市のホームページより

部課ごとにシートを入手して見ることができるようになっています。例えば「教育委員会」のシートをのぞいてみると、小学校の教育振興事業だと、今、急務である小学校へのパソコンの整備について、2019(令和元)年度は3155万円余りを掛けたこと、学校のネットワーク構築・維持管理については378万円余りが掛かり、翌年度は倍近い606万円余りの予算を見込んでいることなどが分かります。

「福祉部」のシートからです。心身の発達に遅れのある子どもへの支援事業や、重度心身障害者の通所施設事業を「皆減・休廃止」するとされています。いったい、何が起きているのでしょうか。

その理由を見てみると、施設の老朽化や、サービス費全額が市の負担になっていることなどから事業の見直しを迫られていて、業務を民間の社会福祉法人に移管するためでした。サービスの質が維持されるか、チェックしたいところですね。施策の見直しをする場合は、その理由についてもこのように明らかにされています。

「市長室」の広報事業についてのシートでは、ホームページのアクセス数が出ていました。「市報ちちぶ」という広報誌を出していて、紙で配布しながらホームページでも見られるようにしているようです。2018(平成30)年度は年間149万PV(ページビュー)でしたが、2019年度は目標の150万PVには到達できず、むしろ114万PVに下がってしまったようです。 

シートの最後で改善点を指摘していて、「内容に変化がなくマンネリ化」という厳しい意見がついていましたね。同じサイト運営者として、頑張りましょう!

さて、行政側が施策の結果に対して高い評価をしていても、寧ろそこから大きな課題を見出すこともできます。次は静岡市の報告書の内容を見ていきましょう。

会員限定で公開する後半では、自治体の財政の健全度が分かる指標のオープンデータなどを紹介します。

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