フリーランスで失敗しないために|契約と法律の重要ポイントを解説 セミナーも29日に開催
コロナを経て働き方も多様化する中で、フリーランスという選択肢は、ぐっと身近になっています。フリーランス人口は、本業以外にも仕事を持つ副業や複業を含めると1500万人(約10年で1.5倍)にのぼるとの調査も。11月1日にはフリーランスが安心して働ける環境整備を目的とした、フリーランス新法も施行されます。
フリーランスのお財布事情やセルフブランディング、交渉の仕方、契約に必要な法的知識まで一気に学ぶオンライン勉強会を、フリーランス協会代表理事の平田麻莉さんを招いて開催します。
ライティング・編集スキル講座の一環ですが、現在もしくは将来フリーランスで働くすべての人達が対象です。申し込みはこちら。
フリーランスで安心して働くための新法 10のポイント
勉強会に先立ち、2024年11月1日施行の「フリーランス新法とは?」をまとめました。フリーランスという働き方が広がる一方で、発注する企業側とのトラブルも増えています。基礎知識として、まずはこちらを!
D-JEDI理事 滝川麻衣子
1.法律の目的は大きく2つ
新法の目的は「取引の適正化」と「就業環境の整備」。つまりフリーランスの人たちが安心して働ける環境整備です。
「新法はいわばフリーランスの人たちが取引先と交渉をする際の『印籠』のような役割。そのためには内容をしっかり理解することが必要です」とフリーランス協会代表理事の平田麻莉さん。
しっかり理解した上で、「実際にこういう時はどう交渉したらいいのか」に迷う人には、フリーランス・トラブル110番が設置されています。契約や仕事上のトラブルについて、フリーランスで働く人たちが無料で弁護士に相談できる窓口です。
2.この法律の「フリーランス」は「業務委託の相手方である事業者で、従業員を使用しないもの」に限る
フリーランスで「個人相手に」撮影をする、スタイリストをやるなどの仕事もありますが「事業者が相手ではない」「業務委託ではない」ので、この法律の対象ではありません。また「フリーランス」で働く人の中には法人として従業員を抱えているケースもありますが、こちらも対象ではありません。
一方で業務委託で仕事を依頼する「フリーランスの人と仕事をする企業」はまさにこの法律の当事者。自らはフリーランスではなくても新法の理解と遵守が必要です。
3. 書面やメールで取引の条件を明示すべき
「口頭でのやりとり」のみで、発注→納品→支払いまで進む仕事を経験したフリーランスの人は少なくないと思います。しかし、新法ではこれはNG。依頼したらすぐに、必ず書面やメールなどで取引内容の明示が必要です。含まれるべき情報は次の9つ。
4.支払いは60日以内に設定、期日までに必ず支払い
仕事に対して対価が支払われることは会社員なら当たり前。なのにフリーランスになったとたん、スムーズに報酬が支払われない…という大問題が少なくない割合で起きていることが明らかになっています(連合「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2024」)。
連合調査では、全回答者(1,000 名)にフリーランスとしての仕事上のトラブル経験を尋ねたところ「ある」は 46.6%。およそ2人に1人がトラブル経験者で、最多が「不当に低い報酬額」、2番目が「報酬の支払いの遅延」なのです。
新法では「納品から60日以内の期日を定め、できるだけ早く支払う」ことが定められています。
5.押さえておきたい7つの禁止行為
フリーランスに1ヶ月以上の仕事を発注した場合、禁止される7つの行為を覚えておきましょう。最初に明示し、合意した取引内容を逸脱しないことが大前提です。
6.募集条項の表示にご注意
企業は広告などによるフリーランスの募集情報で、虚偽の表示または誤解を生じさせる表示をしてはいけません。また、募集情報を正確かつ最新の内容にすることが必要です。
7.フリーランスにも育児・介護と仕事の両立を
現在、育児や介護の休業制度を認める育児・介護休業法は雇用されている「従業員」のみ適用され、フリーランスで働く人は対象外となっています。
新法では、6ヶ月以上の業務を委託しているフリーランスに対し、申し出に応じて「育児や介護と仕事を両立できるよう必要な配慮をしなくてはならない」ことを定めています。
オンライン業務を認める、急な子どもの病気や介護理由で納期の調整を行う、妊婦健診日に応じて予定調整するーーなどが例として挙げられています。
8.ハラスメント対策はすべての人へ
社員へのハラスメントがあってはならないのと同様、仕事を依頼しているフリーランスの人たちに対しても、具体的なハラスメント対策が企業には求められます。
体制整備の事例としては以下が挙げられています。
ハラスメント防止の研修を自社で行う
相談担当者や制度を設けたり、外部機関に委託したりして相談体制をつくる
ハラスメントが起きたら、すぐに事実関係の把握を行い対処する
9.中途解除の事前予告・理由開示は30日前までに
フリーランスで受ける仕事がいきなり終了になる場合、口頭で伝えられた経験がある人もいるのではないでしょうか。新法施行後は、これは違法になります。
フリーランスに対して6ヶ月以上の業務を委託している場合で、契約を解除する場合や更新しないときは、少なくとも30日前までに、①書面②ファクシミリ③電子メール等による方法でその旨を予告しなければいけません。
また、予告から契約満了までの間に、フリーランスで働く側が「解除の理由を知りたい」と求めた場合は、やはり書面やファクシミリ、メールなどでその理由を伝えなくてはいけません。
10.違反したらどうなるの?
ここまでフリーランス新法の基本的な内容を見てきましたが、では実際に「違反」があった場合はどうなるのでしょうか。
違反した発注事業者は行政調査を受けることになります。指導・助言や、必要措置をとることを「勧告」されたり、勧告に従わない場合は「命令・企業名公表」、さらに従わない場合は罰金が課せられます。
違反が生じている場合、事業者側が改善に応じないなど交渉で困っている場合は、フリーランス・トラブル110番など専門家が対応する窓口への相談がお勧めです。
平田さんが代表理事を務めるフリーランス協会は2017年に設立され、現在は会員総数11万5000人(有料会員1万8000人)に拡大。弁護士費用保険やスキル講座、健康診断などフリーランスへの福利厚生の提供と併せて、「フリーランス白書」という実態調査を実施し、国に環境整備の働きかけをしてきたことが、今回の法制定に大きく寄与しています。
新法はまさに、フリーランスのリアルな声や体験がベースとなっている法律なのです。
フリーランス協会としてここからの大きなテーマは「フリーランスの社会保障制度」だと平田さんは言います。フリーランスには傷病手当も、育児や介護休業も、厚生年金もないのが現状です。
「国としては2040年までにフリーランスでも会社員でも働き方に中立な社会保障の仕組みをつくるとしていますが、かなり先に設定され、議論が先送りされがちです。早期の実現のために、フリーランスの声を届けながら政府への働きかけを続けていきます」(平田さん)
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平田麻莉さんをお迎えする10月29日開催の勉強会は、ライティング・編集スキル講座の一環ですが、現在もしくは将来フリーランスで働くすべての人達が対象です。申し込みはこちら。