オープンデータ活用術・完全版【第4章】③建物の情報を調べるためのツール
D-JEDI理事:熊田安伸
今回も不動産編、建物に特化して調べる方法について述べます。もちろん、登記簿を取る方法もありますが、所有者だけでなく施工者などの詳しい情報を調べたり、無料で特定のジャンルの建物の情報を一気に集められるツールをご紹介します。
「建築計画概要書」は建物データの基本
建物を調べるのに最も役立つオープンデータが、「建築計画概要書」です。建物を建てるとき、建築主は「建築確認申請」をして、建築基準法にのっとったものであるかどうか審査を受ける必要があります。その申請のために提出される書類です。
概要書には、建築主である会社や個人の情報や、建築士、設計者、施工会社の情報、さらに建物の敷地面積や床面積、構造、高さ、設備などの情報が記載されています。大阪府門真市のホームページに架空のサンプルがありましたので、参考に引用します。
提出された書類は、違反建築の防止や、隣などとの紛争防止を目的に建築基準法で閲覧ができる定めで、有料にはなりますが写しも入手できます。閲覧ができるのは提出先の特定行政庁で、
市の場合は市役所
小さな町村の場合は都道府県の土木事務所
になります。ただ、東京都については、延床面積が1万平方メートル以下の建物の場合は市や区で、それを超える大型の建物は都庁の都市整備局市街地建築部建築指導課での閲覧になります。
2018年の西日本豪雨の際、岡山県の倉敷市真備町では多くの住宅が2階まで浸水し、災害関連死を除く51人の犠牲者のうち8割(41人)は平屋の自宅や2階建て住宅の1階で見つかりました。ところが、豪雨の後に建てられた住宅について、NHK岡山放送局の若手記者が「建築計画概要書」を基に調べたところ、32%に当たる307棟が平屋だったことが判明しました。再び洪水が起きれば危険な状態ですが、平屋を建てたほとんどが高齢者。体力的な問題や再建資金の不足で平屋を建てざるを得なかったという実情を明らかにしました。
概要書とともに、建物の図面や「定期調査(検査)報告概要書」、「建築基準法令による処分等の概要書」なども閲覧し入手できるようになっています。耐震偽装工事の問題や、大火事などの取材などにも威力を発揮する基本資料です。
「建設データバンク」を使う
2018年にテレビ東京が賃貸アパート大手のレオパレス21の違法建築問題をスクープしました。
このニュースを追い掛ける場合、各地にあるレオパレスの物件をどう割り出したらいいでしょうか。一覧表など公表されてはいませんし、先に紹介した建築計画概要書を閲覧しに行く方法は手間がかかり過ぎるので、事実上、不可能です。