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オープンデータ活用術・完全版【第3章】④民間企業どうしの受発注を調べる

D-JEDI理事:熊田安伸

今回は、見えにくい民間企業どうしの受発注を調べられるツールをご紹介します。

「工事経歴書」は民間の取引が調べられる

建設業許可申請書に含まれている関係書類の中でも、とびきり重要なのが「工事経歴書」です。

なぜ重要かというと、これまでの章で説明したように、公共事業を誰がいくらで受注したかについては、官庁や自治体が多くの資料を公表しています。しかし、それらの資料では民間同士の受発注は分かりません。もちろん、官報にも載りません。

「工事経歴書」は、民間同士の取引が分かる貴重な資料なのです。「どこから注文を受けたか」「工事の名前」「工事現場の場所」「担当技術者」「請負代金」「工期」が一目瞭然なのです。福島県のホームページに記載例がありましたので、以下に転載しました。

新聞協会賞を受賞した共同通信の「関西電力役員らの金品受領問題」の取材でも工事経歴書が大いに役に立ったということですが、それに追随した朝日新聞もやはり工事経歴書を使い、「金品を渡した側の元助役の関連会社が、原発に関連した工事を関西電力側から受注していた」ことを報じています。

記事の文中に「過去3年分のそれぞれの工事経歴書によると、メンテナンス会社は高浜、大飯、美浜の三つの原発で原子炉を冷やす冷却水系統の工事を中心に、関電や関電と契約している」とあり、「工事経歴書」を基に取材していることを明らかにしています。

「建設業許可申請書」入手のコツ

建設業許可申請書は47万社分も提出されています。調べたい業者の資料があるのか、あるとしてもどこで閲覧すればいいのか分からないときには、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」というサイトで調べてみましょう。

ここに記載されていれば、建設業許可申請書が提出されているということです。また、宅建業者やマンション管理業者などについても、こちらのサイトで基本情報を入手することができます。

建設業許可申請書は「閲覧のみでコピー禁止、パソコンも持ち込めない」ので書き写すしかありません(時間がかかってもいいなら、情報公開請求で写しを入手できます)。自治体のホームページには業者が提出する書類の様式がありますので、それを印刷して持っていき、書き込むようにすると間違いも減りますし便利です。たびたび利用させてもらっている、福島県のホームページからも書式をダウンロードできます。

ちなみに閲覧コーナーに行くと、やはり様式を印刷して持ち込み、必死に書き込んでいる人の姿を見ることができると思います。まれに他社の記者というケースもありますが、大抵は「帝国データバンク」や「東京商工リサーチ」など、信用調査会社の人たちです。彼らの作成している企業情報のベースになっているのも、実はこの建設業許可申請書なのです。

ここからは会員限定です。企業間の取引が視覚的にわかり、多重の下請け、孫請け構造も調べることができるツールを紹介します。

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