オープンデータ活用術・完全版【第6章】④政治とカネを調査するポイント・支出編
D-JEDI理事:熊田安伸
前回に続いて政治とカネを取材する際のポイントです。前回は「入り」のカネでしたが、今回は「出」ていくカネについて、何に注目すべきかをまとめています。
取材ポイント「支出」
かつての「政治とカネ」取材では、主に政治団体の「収入」が注目されてきました。しかし2006年に「事務所費」問題がクローズアップされ始めて以降、「支出」からも問題を読み解くことが頻繁に行われるようになっています。
1.支出の種類
政治団体の支出には大きく分けて、「経常経費」と「政治活動費」の2種類があります。
このうち経常経費は、人件費や光熱水費など日常的に支出する費目です。事務所の家賃や修繕費、電話代などの事務所費もこの経常経費に当たります。
政治活動費は、会合などの組織活動や選挙の陣中見舞いなどの寄付、機関紙の発行、調査研究費が主な費目です。国会議員関係政治団体において、1万円以上の政治活動費の支出があった場合は、収支報告書に金額や支払年月日、支払い先を個別に記載することと、領収書の添付が義務付けられています。
2.いわゆる「事務所費」問題とは
いわゆる事務所費問題は、支出された金額の不自然さを指摘することで明らかになりました。例えば松岡利勝農水大臣(当時)は、議員会館の部屋を資金管理団体の事務所にしていました。議員会館では光熱費や水道料金が無料です。にもかかわらず、5年間に2800万円余りの光熱水費を支出していると指摘され、「ナントカ還元水をつけている」と釈明し、窮地に立たされました。
一連の問題を受けて、政治資金規正法が改正され、国会議員関係政治団体については2009年分以降、人件費を除く経常経費についても1万円以上の支出は領収書を添付しなければならなくなりました。しかし、政治団体の代表者が議員の秘書であったり、住所が議員事務所であったりしても国会議員関係政治団体として届け出されていないケースも見られます。こうした政治団体の中には、国会議員関係政治団体から資金の多くを移動させているケースもあり、注意してチェックする必要があります。
3.「事務所」の現状は要注意
いわゆる事務所費問題ではないのですが、事務所自体が問題となるケースがあります。一般の個人や法人が所有している建物が、事務所として指定されているケースです。
政治資金規正法では、事務所などを無償や著しく安い価格で提供された場合、家賃分に相当する金額を「寄付」として収入に記載する必要があります(支出にも同額を記載して、収支のバランスを取ることになります)。また、無償提供を受けている事務所が会社名義であった場合、法律で禁じられている企業・団体からの寄付に当たる可能性があります。