マードックからマスクへ 保守系メディアの主役交代が大統領選に与える影響は
アメリカの保守系メディアとして最も知られるのはFOX Newsでしたが、その地位を奪っているのがTwitterです。トランプ氏を追うデサンティス・フロリダ州知事が大統領選に立候補表明したのは、Twitterが運営するSpaceでした。その変化は2024年の大統領選にどんな影響を及ぼすのか。保守系メディアの変容について、ニューヨーク在住のジャーナリスト津山恵子さんのレポートです。
米メディア界で、保守系を中心に大きな変化が訪れている。米政界に大きな影響力があったメディア王ルパート・マードック氏(92)に代わり、Twitterを買収した実業家イーロン・マスク氏(51)が存在感を増している。注目の共和党大統領候補を後押しし、2024年大統領選にも影響を及ぼす可能性が急速に高まっている。
マスク氏が仕切ったデサンティス氏の立候補表明
テスラの最高経営責任者(CEO)のマスク氏がTwitterを買収したのは2022年10月。そのマスク氏が今度は選挙絡みで周囲を驚かせた。
2023年5月24日午後6時(米東部時間)、Twitterの音声を使ったリアルタイム配信機能Spaceを使って、2024年大統領選の共和党の有力候補の1人と言われるロン・デサンティス・フロリダ州知事(44)が立候補を表明した。
その発表のホストを務めたのがマスク氏だった。大統領候補者は、集会かオンラインビデオで出馬表明するケースが多いが、Twitterで「生中継」するのはアメリカでは初めてだ。
伝統的メディアが受けたショックは大きかった。マスク氏の仕切りで出馬表明をするという発表は前日の5月23日、速報として流れてきた。メディア界とは無縁のマスク氏がスクープしたような状況だ。Twitterというプラットフォームが共和党候補を支持するという政治的に偏った印象も植え付けた。
ところが、発表自体は、惨憺たるものだった。
「デサンティス知事を迎えられて光栄です」とマスク氏は切り出したが、何度も中断され、10分以上の空白もあった。Twitterのフィードやメディアの速報は、嘲笑的なものに一転した。
マスク氏はめげずに、こう主張した。
「誰かが国民に語りかけ、世界中の人々が聞ける仕組みはなかった。とても画期的だ」
デサンティス氏は、こう返した。
「Twitterは表現の自由の提唱者の手にわたった。これは我が国の将来にとってとても重要だ」
Twitterが抱えた2つの問題
この発表では、2つの問題が明らかになった。