オープンデータ活用術・完全版【第3章】③非上場企業を調べる(後編)
D-JEDI理事:熊田安伸
今回も企業を調べるためのツールをご紹介します。上場/非上場に関わらず、これまで紹介してきたツールよりも詳しい情報を入手できるテクニックです。
「建設業許可申請書」には膨大な情報が
EDINETやgBizINFOよりも多くの情報が網羅されている、頼りになるオープンデータが「建設業許可申請書」です。500万円以上の建設工事をする業者が、5年に1度申請しなければならないもので、年1回「変更届出書」も提出されます。この書類、情報公開で入手することもできますが、そんな手続きをしなくても、すぐに閲覧することが可能なのです。
なぜ閲覧制度があるのかというと、建設業者の施工能力や実績、経営内容等に関する情報を提供することで、適切な業者選定をしてもらうためです。一口に「工事」といってもその範囲は非常に広く、廃棄物処理業者や電気工事業者も登録しているので、申請しているのは47万社超。膨大な情報があります。建設業許可申請書が提出されているかどうかは、国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で検索すると分かります。
複数の都道府県にまたがって事業をしている大手業者の場合は、国土交通省の地方整備局で、そうでなければ都道府県庁に行きさえすれば、窓口で申し込んで即座に見られます。例えば、東京都なら都市整備局の市街地建築部・建設業課の閲覧コーナーに行けば閲覧ができます。ただし、少々面倒な制約があります。
カメラでの撮影は禁止。パソコンの持ち込みも禁止(手で書き写すしかない)
閲覧数に制限をかけているところも
東京都、埼玉県、神奈川県はなぜか有料(以前は無料だったのに)
愚痴を言っていてはきりがないので、どんな情報が得られるのか具体的に見ていきましょう。福島県のホームページに分かりやすく記載例が並んでいたので、そちらへのリンクも掲載しておきます。
「役員の一覧」には、登記簿などと違って名前に読み仮名が振ってあります。テレビ局の記者にはうれしいですよね。「常勤役員等の略歴書」にはさらに豊富な情報が含まれています。生年月日や住所が分かるという点では、登記簿よりはるかに優れもの。そして職歴が分かるので、天下りなども割り出せます。さらに「賞罰」の欄があって、建設業での行政処分や行政罰、刑罰などの情報もここに記載されます。
同じように、「建設業法施行令第3条に規定する使用人」、つまり、支店長や営業所長についても一覧や詳しい情報が分かる調書があります。こちらも名前と読み仮名、生年月日、住所、賞罰を知ることができます。
また、そこまで詳細な情報ではありませんが、「専任技術者一覧表」ではどの工事にどの技術者が関わっていたかの名前が分かるので、特定の工事を調べる際に取材先を広げるきっかけになります。
この他にも、「営業所一覧表」や、社員をどこに何人配置しているかが分かる「使用人数」、それに上場企業と同じように「貸借対照表」や「損益計算書」といった財務諸表も閲覧することができます。「主要取引先金融機関名」もあるので、そちらも取材先を広げる材料になるでしょう。
ただ、以前は閲覧できた「株主調書」は法改正で見られなくなってしまいました。非上場企業の株を誰がどれだけ持っているのか、実際に事件取材に役立った例もあるだけに極めて残念です。
同様に「納税証明書」も見られなくなりました。なかなか見分けるのは難しいのですが、こちらも国税から追徴課税処分を受けて納税したことに気付けるケースもあっただけに、やはり残念です。
しかし、この世に存在するのであれば、記者であれば必ずどこかで手に入れる方法を探れるはず。諦めずに頑張りましょう。