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オープンデータ活用術・完全版【第9章】新しい時代の「アンケート」

D-JEDI理事:熊田安伸

いよいよこの連載も最終回です。調査報道に使われる手法の一つとして、「アンケート」があります。最近では新たな手法も生まれているので、ここで紹介したいと思います。


アンケートとはそもそもフランス語のenquêteで「質問による調査」というような意味(だから「アンケート調査」という言葉はおかしいと、かたくなに使わないデスクもいます)。大きな災害などがあるととにかく使われます。最近ではGoogleフォームなどのツールも発達したので、ネットを使って手早く手軽に実施することができるようになりました。

しかしこれが調査報道といえるのか、と疑問を抱くような記事が散見されます。例えば、「被災地では今も〇〇な人が4割に上ることがアンケートで分かりました」という記事。震災〇年のようなタイミングでよく見掛けるのですが、「4割」という数字をどう捉えればいいのか。伝える側の感覚で恣し
意い的にどのようにも利用できてしまいます。現場を丹念に取材することで数字の意味付けをしていれば別ですが、恐ろしいことに数字だけ示している記事もあります。よく記者は「懸念されていたことを裏付ける」ためにアン
ケートを使いたがりますが、その姿勢だと結果ありきの恣意的な利用になりがちなので、十分な検討と注意が必要です。

やはりアンケートを使った調査報道というのは、「知られざる新たな事象」を明らかにできたとき、成功したといえるのではないでしょうか。一連の震災報道の中で成功例として挙げたいのが、2011(平成23)年10月に放送された「NHKスペシャル 巨大津波その時ひとはどう動いたか」です。

津波で多くの人が犠牲になった宮城県名取市の閖上(ゆりあげ)地区で住民への大規模アンケートを実施。住民5600人の安否情報を色分けした「被災マップ」と、津波が来るまでの間に何を考え、どう行動したのかを聞き取りした「行動心理マップ」を作成して分析しています。その結果、確たる根拠はないにもかかわらず「ここは大丈夫だろう」というような心理に陥ってしまう実態を明らかにした報道です。

「正常性バイアス」というその心理は、今でこそ災害時によく語られますが、当時はあまり注目されていませんでした。次の大災害に向けて警鐘を鳴らす、価値のある報道だったと思います。

ここから先は会員限定です。アンケートを実施するうえで忘れてはならないポイントや、大規模アンケートの回収率を上げ、成功させたテクニックをご紹介します。

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