オープンデータ活用術・完全版【第7章】①自動車事故を調べる
D-JEDI理事:熊田安伸
さて、ここからは第7章、「乗り物や事故を調べる」です。この分野もオープンデータが次第に充実してきました。
大事故には必ず「報告書」がある
大きな事故があったとき、国の機関が調査に入ります。そして調査に入ったならば、必ず「報告書」が作成されます。それを入手すれば、事故の詳細な情報を知ることができるわけです。
例えば自動車事故であれば、「自動車事故報告書」の他、現場の見取り図なども入った「状況報告書」「運転者の健康状態に起因する事故の調査事項」などの文書が作成されるので、それらを情報公開請求で入手することができます。
一方、トラック、バス、タクシーなどの事業者側も、重大事故の場合は「自動車事故報告書」を運輸支局長を経由して国土交通大臣に30日以内に提出しなければなりません。この際、ドライバーの勤務表なども提出されることがあります。
さらに「死者1人以上の事故(トラックは2人以上)」「けが人10人以上の事故」「酒気帯び運転の事故」「転覆、転落、火災事故」などについては、事業者は24時間以内に「速報」を提出しなければなりません。
これらも国交省や運輸局、運輸支局などへの情報公開請求で入手することができます。
2016(平成28)年1月に、長野県軽井沢町で13人の大学生が亡くなるスキーツアーのバス事故が発生しました。NHKの取材班は、事故報告書をはじめとした各種の資料を入手し、「NHKスペシャル そしてバスは暴走した」を放送しました。運転手不足から高齢ドライバーが過酷な勤務を担っている現実や、利益優先で安全対策を怠る会社が跋扈する業界と社会の問題を明らかにした優れた調査報道でした。
自動車事故のオープンデータ
事故報告書は、直後は情報公開で取るしかないので完全に「オープンデータ」であるとはいいにくいところもありますが、過去の事故を検証したり比較したりするなら、オープンデータとして入手できます。