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アメリカの大学デモ報道で存在感増す学生メディア 強まる大学当局の規制の中で

少しお休みしていましたが、ニューヨーク在住のジャーナリスト、津山恵子さんによるアメリカのメディア事情の最前線ルポ、6月から再開します。再開の第1弾は、アメリカの大学メディアについて。皆さんもニュースでご存知の通り、アメリカの大学ではこの数カ月間、イスラエルのガザに対する一方的な攻撃に対して、大学側と学生側との対立が深まっています。その様子を克明に伝えているのが、学生メディアです。


主要メディアを締め出した大学当局

ニューヨークのコロンビア大学キャンパスで始まった親パレスチナ派の学生運動は、野火のように全米に広がった。イスラエルと軍事組織ハマスの戦争が引き金となった学生運動は、1960年代のベトナム反戦運動とは異なった複雑な様相を帯びている。大学当局が警察を即座に、頻繁に動員するなど、神経質な状況が、この原稿を書いている6月初旬でも続いている。

学生らは「停学」のリスクがありながらもなぜ怒り悲しみ、運動を続けているのか。それを知りたい、正しく理解したいと思っても、主要メディアはキャンパスに入るのを制限されている。速報やライブの報道は、学生メディアに頼るしかないという事態が続いている。 
 
「速報:数十人のデモ参加者が、ハミルトン・ホールを占拠」(4月30日)

「速報:午後9時半ごろ、ニューヨーク市警が、ハミルトン・ホールの外でデモ参加者の逮捕を開始」(4月30日)

これらは、コロンビア大の学生新聞「コロンビア・デイリー・スペクテイター(1877年創刊、以下スペクテイター)」のXへの投稿だ。警官にプラスチック製の手錠をかけられた学生らの後ろ姿の写真もあり、まさに現場からの発信だ。

学生と市民運動家が4月30日に突入したホールは、1960年代のベトナム反戦運動でも学生が占拠した同じ場所で象徴的な事件だった。しかし、当局は主要メディアのキャンパスへの立ち入りを規制した。AP通信記者のジェイク・オフェンハーツは「最も強いいら立ちを覚えた夜だった」とCNNに語っている。

会員向けに公開している後半では、ベトナム戦争で変わった学生ラジオの役割や、大学当局による言論統制にも近い事案について解説します。

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