「なぜメディアのDXはこれほど遅れたか?」〜組織と個人のデジタルリスキリング基礎レポート【前編】
日本はデジタルトランスフォメーション(DX)が遅れていると言われますが、メディアのDXも例外ではありません。D-JEDIの理事も全員が伝統的大手メディアからデジタルメディアへの転職を経験しており、日本メディアのDXへの遅れに対する危機感を共有しています。
今回は「リスキリング」のエバンジェリストとして国や自治体への政策提言や企業へのリスキリング導入を手がける、ジャパン・リスキリング・イニシアチブの後藤宗明さんをお迎えし、メディアにおける組織と個人のリスキリングについて議論しました。
前編は、後藤さんのプレゼンテーションと視聴者からの質疑応答のパートをお届けします。
10年かけて自分自身をリスキリングした経験
まず自己紹介を含めて私のバックグラウンドをお話します。私は大学卒業後に銀行に入りましたが、実は40歳まで全くデジタルやテクノロジー関連の仕事をしたことがありませんでした。40歳のときに一念発起してデジタル分野にキャリアチェンジしたのですが、そこから約10年かけて自分自身をリスキリングしてきました。
デジタル分野では、例えばNTTドコモと一緒にフィンテックのサービスを立ち上げたり、通信ベンチャーの取締役として海外進出を試みたこともあります。アクセンチュアでは人材・採用戦略面や人事分野のDXを進める仕事をし、直近ではABEJAという人工知能(AI)のスタートアップでAIの事業開発と、アメリカ拠点の設立責任者、AI研修の企画運営などもやらせていただきました。
コロナ禍によって日本でもデジタル化が進展し、リスキリングが必ず社会で必要になると考え、これまでの経験をもとにリスキリングの啓蒙活動を1人で始めました。リクルートワークス研究所で客員研究員としてリスキリングに関するレポートを共同執筆し、昨年に一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブを立ち上げ、政策提言と企業向けのリスキリングの導入支援を柱にして活動しています。
今年の9月30日に初の書籍『自分のスキルをアップデートし続ける「リスキリング」』を上梓いたしました。たくさんの方に読んでいただいており、第4刷が決まりました。この本では、組織に所属する方がどうやって自分の環境を利用してリスキリングを進めていくのか、ということにフォーカスをしています。これまでの自分の経験とクライアント企業への導入経験から「リスキリングを実践する10のステップ」としてまとめています。
今年の10月12日には、日経新聞さんに企画提案を行って実現した日経リスキリングサミットを運営しまして、驚くべきことに岸田首相にご登壇いただき、私が対談相手を務めるということもありました。
既存ビジネスを破壊するデジタルテクノロジーの進化
今日は、なぜメディアのDXが遅れたのか?というテーマで、事務局の皆様から「メディアのことを思って厳しいことも言って欲しい」とご依頼をいただきましたので、僭越ながら私が外部の人間として思うことをお話いたします。
以前は、メディアのお仕事をすることはなかったのですが、リスキリングの啓蒙活動を通じて大手を含め、様々なメディアの方と毎日のようにお仕事をするようになり、アドバイザーをする機会もありました。その中で色々感じることもありますので、そうしたお話もできればと思います。