
オープンデータ活用術・完全版【第2章】①社団法人・財団法人を調べる(前編)
文:D-JEDI理事 熊田安伸
さて、オープンデータ活用術、今回から第2章に入ります。テーマは「公益的な法人を調べる」です。まずは、何かと問題が起きている社団法人、財団法人の調べ方から始めましょう。
どんな情報が入手できるのか
今回取り上げる社団法人、財団法人、NPO法人、社会福祉法人、独立行政法人といった各種の法人は、共通して以下のような情報をホームページや所管官庁で公開しています。法人の種類によって多少変わりますので、詳しくはそれぞれの項で述べますが、実に多くの情報を含んでいる資料なので、法人を調べるときにはまず手に入れていただくとよいかと思います。
財務諸表
・正味財産増減計算書(収支計算書は徐々になくなり、これに集約)
企業でいうP/L(損益計算書)に当たる。
期間内の収益と費用を記し、財産がどうなったかを示す。
・貸借対照表
BS(バランスシート)。資産と負債の関係を示す。
・重要な会計方針
関連会社の経営状態や債権の処理など、重要な問題の記載も。
財産目録
預金、株、債券など法人がどんな財産を保有しているかが分かる。
事業報告書、事業計画書
どのような事業をしているのかが分かる。法人によっては受け取った補助金の使い道についても記載。
役員名簿
法人以外での肩書も記載。出身母体や天下りも判明。
会員(社員)名簿
業界団体であれば、個人ではなく法人が会員のことも。
特に「財務諸表」については、本当に多くの情報を含んでいるので、コラム「事件記者的な『財務諸表』の読み方」としてのちに解説します。
「一般社団法人」の闇とは
まずは社団法人と財団法人から説明しましょう。
財団法人とは、特定の財産を管理・運用して活動するための団体です。設立には300万円以上の拠出金が必要な上、理事、評議員、監事を置く必要があります。よく知られたところでは、例えばJOC(日本オリンピック委員会)も公益財団法人です。

ただ、こうした活動の内容がよく知られた財団法人ばかりではありません。過去には、大学が裏口入学のための寄付金を受け入れる窓口として使われたケースや、資産家が課税を免れるために資産をプールする道具として使われたこともありました。
しかしそれよりも闇が深いのが、社団法人です。後述する一般社団法人を設立する場合は、資金は必要ありません。たった2人の社員(個人でも法人でも可)がいれば、登記して設立ができてしまうのです。実に簡単につくれるため、今次々と増えているといわれています。東京商工リサーチによれば、2019(令和元)年までのデータでは年間約6000もの法人が新設されています。
社団法人は活動の種類によって、おおまかに四つに分けることができると考えています。
①「業界団体」的な社団法人
経団連、日本医師会、全日本トラック協会、日本水商売協会など
②「同窓会」「学会」など同好の士のための社団法人
〇〇大学同窓会、日本アレルギー学会など
③「民間では困難な事業を担う」「官の事業を担う」社団法人
全国被害者支援ネットワーク、サービスデザイン推進協議会など
④「怪しい」社団法人
明らかに特定のカネもうけのためにつくられたようなもの
社団法人が設立しやすい制度になっているのは、②の同窓会のようなものを法人化できるようにするという側面もあります。一方で、その「設立しやすい」制度があだになって、④のような社団法人も登場してしまっているわけです。
ここからは会員限定です。「公益」と「一般」の違いは。どちらにどうメリットがあるのか。情報はどこまで取れるのかなどを解説します。