オープンデータ活用術・完全版【第3章】⑦情報源の作り方(前編)
D-JEDI理事:熊田安伸
企業の問題を明らかにする取材などの場合、いくらオープンデータを入手したとしても、最後はやはり当事者に当たらなければなりません。結局はどうしたらいいの、という声も聞きますので、私なりの方法論ではありますが、こちらに公開しようと思います。
経済事件の取材ではまず間違いなくこの手でうまくいってきたので、それなりに効果はある手法だと思っています。
ステップ① 閉鎖登記簿などで辞めた役員を調べる
大前提として、企業の関係者のところにいきなり飛び込んでも、よほどの事情でもなければ話をしてくれるはずがありません。むしろ警戒され、会社に「こういう記者が来た」と通報されてしまうのがオチです。そこで、「信頼されている誰かに紹介してもらう」という手段を取った方が、話をしてもらえる確率は格段に上がります。急がば回れです。
まずは会社の登記簿謄本を取りましょう。コラム「法人登記簿、ここが記者的ポイント」でも説明した、閉鎖登記簿を取ります。
すると、辞めた役員が登場するのでピックアップしていきます。その中から、味方になってくれそうな人、不満を持って辞めたという情報がある人を選別します。
上場企業であれば、登記簿でなくても、過去の有価証券報告書の役員の欄を比べてピックアップする手もあります。その方が役員の経歴なども分かるので、情報源を選ぶときには役に立ちます。
選んだ人の中から、脈のありそうな人を徹底的に回って仲良くなりましょう(ここは努力するしかありません。「あなたの愛した会社を良くするためだ」と)。
どうしても探せないときには、第2章「社団法人・財団法人を調べるためのツール」で紹介した「業界団体」が役に立ちます。業界団体は各社に情報ルートを持っているので、紹介してくれる人がいないか探しましょう。また地場の企業の場合は、その会社の幹部に影響力を持つ地方議員なども候補になります。
ステップ② 現役社員を紹介してもらう
ステップ①でつながった人もある程度は情報を持っているかもしれませんが、「辞めた人」なので、現時点でのコアな情報源にはなりません。そこで、その人に一番信頼できる現役の社員を紹介してもらいましょう。中堅幹部ぐらいが一番いいです。実はその人が直接の情報源にならなくても構いません。誰でもいいのでがっちり信頼できる橋頭堡をつくるのです。
もちろん、引き合わせてもらうのが一番ですが、電話をしてもらう、紹介状を書いてもらうなどの手段でも十分に効果的です。企業取材、組織取材はとにかく「紹介の紹介の紹介」で人脈を増やしていくのが鉄則です。