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D-JEDI連載「取材や調査に役立つオープンデータ活用術」

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あなたが苦労して調べても手に入らなかった情報、実はネットですでに公開されているかも。「オープンデータ活用術」では、NHKで調査報道に携わり、現在はSlowNewsシニアコンテンツ…
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#OSINT

オープンデータ活用術・完全版【第7章】④航空機のオープンデータ

D-JEDI理事:熊田安伸 「乗り物や事故を調べる」の第4回です。今回は航空機のオープンデータをご紹介します。 「Flightradar24」などで航空機やルートを調べる船舶と同じように、航空機も現在位置や飛行ルートなどを調べられるサイトがあります。 有名どころは、「Flightradar24」。NHKのニュースでも「Flightradarによりますと……」とクレジットを付けて使うほどになっているので、今や使っているメディアは多いでしょう。 これもやはり事故などを防ぐ

オープンデータ活用術・完全版【第7章】②鉄道・船舶・航空機の事故を調べる

D-JEDI理事:熊田安伸 「乗り物や事故を調べる」の第2回です。今回は、鉄道や船舶、航空機の事故を調べることができるオープンデータをご紹介します。 「運輸安全委員会」のサイトを使う船舶・鉄道・航空機の事故のオープンデータは、運輸安全委員会のホームページから報告書を入手できます。 船であれば衝突事故や座礁事故だけでなく、船内での労災なども調べることができます。 『記者のためのオープンデータ活用ハンドブック』を書いた時と比べると、かなり仕様が変わりました。例えば航空機の

オープンデータ活用術・完全版【第6章】④政治とカネを調査するポイント・支出編

D-JEDI理事:熊田安伸 前回に続いて政治とカネを取材する際のポイントです。前回は「入り」のカネでしたが、今回は「出」ていくカネについて、何に注目すべきかをまとめています。 取材ポイント「支出」かつての「政治とカネ」取材では、主に政治団体の「収入」が注目されてきました。しかし2006年に「事務所費」問題がクローズアップされ始めて以降、「支出」からも問題を読み解くことが頻繁に行われるようになっています。 1.支出の種類 政治団体の支出には大きく分けて、「経常経費」と「

オープンデータ活用術・完全版【第6章】③政治とカネを調査するポイント・収入編

D-JEDI理事:熊田安伸 前回までは政治資金や政治家の取材に使える資料やツールをご紹介しましたが、今回は実際に取材する際のポイントをまとめてみました。プロのジャーナリストでなくてもポイントを押さえれば、問題点を見るけることは可能です。関心のある方はぜひチャレンジしてみてください。 取材ポイント「収入」ただ漠然と政治資金収支報告書を眺めていて問題に気付けるかというと……気付けるんです。幾つも読み込んでいるうちに、明らかに「違和感」のあるものが浮かび上がってくるんですよね。

オープンデータ活用術・完全版【第6章】②政治資金を調べるためのツール

D-JEDI理事:熊田安伸 前回、政治団体の調べ方の基本をお伝えしました。今回は政治資金をより深く調べるために使えるツールをご紹介します。いずれも無料のオープンデータになります。 「政治資金センター」のサイトで調べる「政治資金収支報告書」は、前回紹介した総務省のホームページに掲載されるので、まずはそこから入手することです。 ただ、ここですべてを入手することはできません。都道府県選管への届け出分は、それぞれのホームページで入手する必要があります。 ところがここで大きな難

オープンデータ活用術・完全版【第6章】①政治団体の基礎知識と調べ方

D-JEDI理事:熊田安伸 現在、政界を大激震させている自民党の派閥のパーティー券収入のキックバック問題。そうした政治とカネの報道の多くも、実はオープンデータを使ってできてしまいます。今回から、政治とカネにまつわるデータと利用できるツールについてご紹介していきます。まずは「政治団体」の調べ方からです。 政治家の団体には4種類ある政治家の活動やカネを調べるときに、必ず押さえておくべきものがあります。それが「政治団体」です。政治家はここをベースに政治活動をしています。つまり、

オープンデータ活用術・完全版【第5章】①個人の情報はどう調べるか

D-JEDI理事:熊田安伸 「個人についての情報」は入手が難しいですよね。企業人であれば、ここまで紹介したテクニックで一定の情報は入手できます。本章ではそれ以外の、オープンデータで入手できるさまざまな個人についての情報を紹介します。まずは何度も紹介している「官報」ですが、個人についてもやはり情報の宝庫なのです(基本的な使い方は第1章を参照のこと) 「旅券の返納命令」を官報で調べる犯罪者に国外逃亡の恐れがあるとき、国は旅券(パスポート)を返納するよう命令します。その際、官報

オープンデータ活用術・完全版【第4章】③建物の情報を調べるためのツール

D-JEDI理事:熊田安伸 今回も不動産編、建物に特化して調べる方法について述べます。もちろん、登記簿を取る方法もありますが、所有者だけでなく施工者などの詳しい情報を調べたり、無料で特定のジャンルの建物の情報を一気に集められるツールをご紹介します。 「建築計画概要書」は建物データの基本建物を調べるのに最も役立つオープンデータが、「建築計画概要書」です。建物を建てるとき、建築主は「建築確認申請」をして、建築基準法にのっとったものであるかどうか審査を受ける必要があります。その

オープンデータ活用術・完全版【第4章】②不動産の価格を調べるためのツール

D-JEDI理事:熊田安伸 今回も「不動産を調べる」の続きです。不動産がいくらで売買されたかをオープンデータで調べるのは結構、難しいものです。とはいえ、調べることが可能ないくつかのケースやツールもあるので、それをまとめてご紹介します。 「不動産取引価格情報検索」を使う不動産がいくらで取引されたか。前回紹介した「登記簿」では、抵当権の設定額などから推測するしかありません。公表されている「土地の価格」といえば、国土交通省の「地価公示」の公示価格、都道府県の「地価調査」の標準価

オープンデータ活用術・完全版【第3章】⑥製薬会社が医師に渡したカネを調べる

D-JEDI理事:熊田安伸 企業編、今回はちょっとニッチですが、製薬会社が医師にどんな名目でどのようなカネを支払っているか、調べられるサイトをご紹介します。 製薬会社が医師に提供したカネを調べるためのツール製薬会社や医療機器メーカーは、医師や病院に研究の支援や講演料、コンサルティングの対価などさまざまな名目でカネを支払っています。 企業自身が公表した情報を基にデータベースをつくり、その実態を報じたのがアメリカの調査報道NPOプロパブリカの「Dollars for Doc

オープンデータ活用術・完全版【第3章】⑤企業の「働き方」を調べる

D-JEDI理事:熊田安伸 企業編、まだまだ続きます。今回は、最近注目されている企業の「働き方」のデータを入手できるツールをご紹介します。 「しょくばらぼ」で働き方を調べるまずは「働き方」が企業によってどう違うのかを調べられる「しょくばらぼ」です。 厚生労働省が運営するサイトで、「職場改善に積極的な企業の残業時間(時間外労働時間)や有給休暇取得率、平均年齢などの職場情報を検索・比較できるWebサイトです」とのこと。もともとは求職者のためにつくられたデータベースです。

オープンデータ活用術・完全版【第3章】④民間企業どうしの受発注を調べる

D-JEDI理事:熊田安伸 今回は、見えにくい民間企業どうしの受発注を調べられるツールをご紹介します。 「工事経歴書」は民間の取引が調べられる建設業許可申請書に含まれている関係書類の中でも、とびきり重要なのが「工事経歴書」です。 なぜ重要かというと、これまでの章で説明したように、公共事業を誰がいくらで受注したかについては、官庁や自治体が多くの資料を公表しています。しかし、それらの資料では民間同士の受発注は分かりません。もちろん、官報にも載りません。 「工事経歴書」は、

オープンデータ活用術・完全版【第2章】⑤事件記者的な「財務諸表」の読み方

D-JEDI理事:熊田安伸 この連載にもたびたび登場する、法人の基本資料「財務諸表」。なぜ重視しているのかというと、情報が本当にたくさん詰まっているからです。今やオープンにされているものが多いので、使わない手はありません。一般的な読み方、あるいは経済記者的な読み方は、解説書などが多数あるので、そちらをご覧ください。完全に「我流」ではありますが、眺めていくだけで「あれ? おかしくないか」と気付ける事件記者的なポイントを解説します。 「損益計算書」「正味財産増減計算書」を眺め

オープンデータ活用術・完全版【第2章】③NPO法人を調べる

D-JEDI理事:熊田安伸 今回はNPO法人の調べ方について解説します。こちらも情報を入手するのに便利なサイトがあります。また公益法人と同様に、どういう状態なら問題だといえるのかという一つの目安がありますので、それも合わせて紹介します。 NPO法人の情報のありかは、その種類によるボランティアなど、非営利の活動をするNPO法人を設立するには、所轄庁(自治体)の認証が必要になります。所轄庁はそのNPOの活動範囲によって変わってきます。 二つ以上の都道府県に事務所を置くなら「