見出し画像

メディア人材のキャリアチェンジとDXリスキリング【総集編】

文:D-JEDI理事 滝川麻衣子

メディア関係者と話すと、人手不足と人材流出、リストラの話になりがちな昨今ですが、同時に、メディアやコンテンツの仕事に誇りと希望を持っている人たちがいるのも事実です。私たちがデジタル・ジャーナリスト育成機構(D-JEDI)を立ち上げた理由もここにあります。

そんな中、2022年はリスキリングが一気に注目を集めたことはこちらの記事でも触れました。世界中のメディアがマネタイズや新時代のかたちを模索していますが、間違いなく言えるのは、デジタル・トランスフォーメーションと人材のリスキリングが、カギを握るということです。

とはいえ、リスキリングが必要なことは浸透しつつあっても、メディアに関わる人たちが実際にどうやってリスキリングやキャリアチェンジを経てきたか?具体例は、それほど語られていません。

今回はケース別に、改めてご紹介してみたいと思います。

NHKからスタートアップへ。具体的に何を身につけたか

SEOの基礎、photoshopやIllustratorといった画像加工、G系ツール、魅せるExcel などなど、具体的なツールのラインナップを実体験から紹介しているのが、こちら熊田安伸さんの記事です。

ここまでしないと転職できないのか??という驚きを覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、リスキリングの深さも高みも人それぞれ。ここまで果たされていると、まず心配ないレベルの事例と思います。

いずれにしても、デジタルリスキリングの具体的なイメージを持つためには現在、日本で書かれたものの中では必読です。

ちなみに、こうしたデジタルリスキリングの入り口として、日本でのリスキリングパイオニアでもある後藤宗明さんと、リスキリング基礎を学べるセミナー(11月22日火曜2000スタート)はこちらです↓


目的地への逆算から考える。自分に足りないものは何か?


「なぜ朝日新聞を辞めるんですか」「もったいない」

こんな言葉を何度かけられても「全く迷いのない転職だった」というデジタルメディアへのキャリアチェンジを書いているのが、浜田敬子さんのこちらの記事です。

AERA編集長、Business Insider Japan編集長、今はリクルートのWorks編集長と歴任されている、編集長といえばこの人、という浜田さん。

そんな人でも「長くニュースの仕事を続けるために、自分に足りないものは何か」という逆算からキャリアチェンジを決めていることが、具体的に描かれています。

また、デジタルメディアの編集長時代の経験から、ある意味「採用基準」が示されているのも注目です。

人数が大手メディアほど潤沢ではない新興メディアで求められるのは、1人何役もこなせる人、2つ3つの得意技がある人です。

ライターとしての能力だけでなく、例えばデスク業務経験があり、後輩の育成やマネジメントも原稿の指導もできる。データを見やすいビジュアルで表現できる。自身がSNSが大好きで使いこなしている。

さらには企画が立てられたり、イベントの運営ができたり、喋りがうまかったり、動画の編集もできたり、と小さなチームで最大限のパフォーマンスを出すには、一人ひとりが求められるものは大きくなります。

結果の出ない暗くて長いトンネルを、抜けるためにもがいた先にあるもの

朝日新聞社のカメラマンから、ヤフーのチーフドキュメンタリープロデューサーに転職。映像制作のノウハウをトップランナーに聞いた『ドキュメンタリー・マスタークラス』も発刊するなど、映像のプロフェッショナルとして時代に即した転身を果たしている人…。

プロフィールからはそんな理想的なキャリアに見える金川雄策さん。そんな金川さんのこちらの記事は、転職後に直面するリアリティショックに満ちています。

36歳での初めての転職に、周囲から「あなたは何ができるの?何か特別なスキルがあるからここにいるのでしょう」という目線を被害妄想的にバシバシ感じ、全身に蕁麻疹がでる有り様でした。

リスキリングは、自身に足りないものと向き合う必要があるため、一種のショックとセットです。またそれは若い時よりも、キャリアを重ねるほど厳しい作業でもあります。

ただ、こうしたことは必然であると覚悟することでも、アンラーンは身近なものになります。

新聞記者、ネットメディア編集長、Google、また独立…プロティアンキャリア上級編

新聞記者からアメリカのネットメディアの日本版創刊編集長になり、独立してGoogleで働いて、また独立して今は日本ファクトチェックセンターで再び編集長ーー。

ギリシャ神話の変幻自在の神プロテウスから名付けられた「プロティアンキャリア」というキャリア理論がありますが、それを地でいくのが古田大輔さんのこちらの記事です。

ほとんど唯一無二の変遷なので、ハードル高く思えるかもしれません。ただし、「仕事ができなかったからこそ、自分の役割を考えた」という意外なフレーズからわかるように、等身大のキャリアストーリーになっています。

キャリアは計画し過ぎず、偶然を楽しむことでひらける

最後はこの記事を書いている筆者である私の記事ですが、こちらはリスキリングパーツについては触れてはいません。

ですので、リスキリング手法について読みたい方は飛ばしていただくのがいいのですが、キャリア理論でいくところの「プランド・ハプスタンスセオリー」の事例にはなりそうです。

プランド・ハプスタンスセオリーは、スタンフォード大学のクランボルツ教授が提唱したキャリア論。キャリアは偶然の出来事、予期せぬ出来事を受け入れ、最善を尽くすことの積み重ねである…という考え方です。

加えて、メディア人材の転職の時に身につけておくといいと思うものを、身に沁みた経験から挙げておきます。(私も今なおリスキリング中です)

  • 届ける力、マーケティングの素養やビジュアライズスキル

  • データ分析・活用力

  • 財務諸表の読み方、会計基礎知識

  • 経営理論

  • 発信媒体を問わない企画力

  • 英語

  • マネジメント


そして、リスキリングと言っても何からやるべきかに迷われる方、リスキリングを今すぐ始めたい方には、11月22日(火)2000-2130、私たちJEDIが開催しますこちらセミナーを。

ジャパン・リスキリング・イニシアチブ代表の後藤宗明さんをお招きする、リスキリング基礎講座です。

それでは引き続き、リスキリングの旅を続けましょう!